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PHSの不遇

今回の記事は思い入れのあるネタでいきましょう

開発に携わったものとして忘れてしまわぬよう「備忘録」の要素も含めて書きたいと思います

ではではスタートです



既に公衆サービスが終了してしまった

PHS(Personal Handyphone System)

PHS幾つかの不遇について書き記します


その前にPHSが生まれた背景についてです

・電話機自由化
1985年
それまでNTTにより強制的にレンタルさせられる形で取り付けられていた電話機が
自由化され技術基準適合機種であれば自由に取り付けが出来るようになりました
日本では、まだワイヤレスがポピュラーになる前の時代のこと

・海外向けワイヤレス電話機
海外では既にワイヤレス電話機が一般家庭で利用されていました
このころの海外映画のワンシーンでシルバーのアンテナを伸ばした電話機を肩と顎で挟み
料理等をしながら電話をする姿を見たものです

日本は輸出ビジネスとしてワイヤレス電話機を多数のメーカーが製造していました
そこには弱小メーカーも当然存在しており売れ残った電話機が格安で日本の市場に流通していました
勿論技術認定器ではありません

・第一世代コードレス電話機
非技術認定器(コードレス電話)
これが非常に売れました

非技術認定器が流通し「混線・タダ掛け」が横行しだしたころ
やっと郵政省(現総務省)は重い腰を上げ法整備を開始します

そんな事情から日本向けワイヤレス電話機(第一世代コードレス電話)が市場に投入されます(ARIB STD-14)
www.arib.or.jp
しかしこれも直ぐに周波数が足りなくなり混線が発生したり
電話のタダ掛けが発生し社会現象にもなりました

・いよいよ登場PHS
前置きが長くなりましたが
いよいよPHS(第二世代コードレス電話システム ARIB STD-28)の登場です
www.arib.or.jp

新しい周波数が割り当てられ、音声を含め信号はフルデジタル化されています
周波数に選択は内臓されたコンピュータが全てコントロールするため混信は起こりません
また新しい音声デジタル化技術(ADPCM)により、高圧縮・高品質を実現しています

余談ですが当時の携帯電話は第二世代(2G)が出始めた頃で、同じデジタル電話でもPHSの方が
音声品質は格段に上でした
(携帯電話の音声デジタル化技術にはμ-lawアルゴリズムが使われています)



長い前置きにお付き合い頂きありがとう御座います
さてここからが本題の不遇についてとなります

皆さんは幾つご存じでしょうか?


(1)サービス開始前からケチがつく(改名しました)
当初PHSには別の名前がついていました
PHP(Personal Handy Phoneの略)と言う名前で出ています

これに反論したのが月間PHP松下電器の研究施設PHPが発行していた月刊誌)

「うちの方が先にPHPと言う名前をしようしている
紛らわしく混同される恐れがある」

などなど。。。

抗議をされて泣く泣く名前を変更することとなりました

これが市場に投入される3か月まえの出来事です

当時の松下電器は携帯子機こそNTTブランドを扱っていましたが
それ以前のNTT案件としてはあまり参入できていないという事情があります
特に当時はデジタル交換機の開発が大変大きな案件で松下電器はそこへの参入が叶いませんでした

だから
ということはないと思いますが。。。。



(2)価格競争勝者のはずが
当時、携帯電話の通話料が1分100円
しかも着信側にも同料金が課金されるという時代でした
(因みに電話の課金は発信側に行われます)

そんな中、PHSは1分10円と言う
大変リーズナブルな料金で利用が出来たのです

この低料金と機体の小型さ、手軽さが相まって一機の普及しました
携帯電話からの乗り換えも相次い発生しました
端末代金0円なども後押ししていますが

これを快く思っていなかったのが携帯電話会社各社です
携帯電話からの流出を抑えれためにあれやこれやと試行錯誤

最終的には利用料金も下がるまでに発展
PHSの唯一の利点が奪われてしまい
この頃からPHS加入者は鈍化して急降下となります



(3)繋がらない
PHSのサービス提供会社は3社でスタートしました
NTT母体のNTTパーソナル

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NTTパーソナル

電力会社系によるアステル

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アステル

KDDが母体のDDIポケット

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DDIポケット

中でもDDIポケットは他の2社(20mW)より基地局の出力が強く(500mW)電波の到達距離が長かったのです
20mWで到達距離100mと言われ、DDIポケットは500mWで1kmとも言われました

更にDDIポケット以外の他2社が主に電柱に基地局を設置するのに対し、DDIポケットはビルの屋上への設置が中心でした


各社のPHSがサービス開始して間もない時期のことです

DDIポケットPHSに接続トラブルが発生したのです
「電話が繋がらない」
「繋がってもすぐに切れてしまう」

この様なトラブルが相次いで発生しました
しかも妙なことにトラブルが発生したのはDDIポケットのサービスだけ

サービスが開始してまだ間がないこともあり、情報も少なく、何が起きているのか手探り状態でした

原因はDDIポケットの電波がビルなどの影響により想定外の範囲まで飛んでしまい
その影響を受けた基地局がサービスを開始出来ない状態だったのです

DDIポケットは独自の方式で基地局間を同期しており、想定外の電波の影響を受けた基地局
同期する基地局を見失いサービスを停止した状態となりました

DDIポケットはすぐさま対策を講じ回復させたのですが、「PHSは繋がらない」と言う印象が付いた一因となってしまいました



(4)高速移動には向きません
PHSはそもそも徒歩で移動での利用を想定し設計されました

ところがDDIポケットの電波が以外にも頑張ってしまったため
利用者には
「自動車移動でも使える」
という印象がついていました

こうなるとNTTパーソナルアステルはたまったものではありません
当然「移動中に切れる」とクレームが来るわけです

今更「徒歩移動での利用が。。。」などとの説明が通るわけありません

この問題を解決するには基地局の電波の強さを改善するか
システムの根本機能を変更するしか改善手段はないのですが
何れの方法も困難であり、解決手段は皆無でした(費用的問題も)

これにより「PHSは繋がらない」という印象を決定付けてしまいました

これによりPHSの加入者の伸びは鈍化し、逆に流出が加速していきます


PHSは日本産の貴重な技術です
この技術は日本以外に香港で利用され
香港では開発国の日本より普及しました


このような貴重な技術が発展半ばで消滅してしまうのは誠に残念でなりません

開発に携わった物として思います